Home モデル 「豊明モデル」が初の首位、2020年は新型コロナの影響大 – 新公民連携最前線

「豊明モデル」が初の首位、2020年は新型コロナの影響大 – 新公民連携最前線

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2019年度の自治体職員・議員による視察の受け入れ件数が最も多かった事業は、愛知県豊明(とよあけ)市の「地域包括ケア 豊明モデル」となった。2位は、2年連続で神奈川県大和市の文化創造拠点「シリウス」が入った。調査開始から3年連続トップだった、岩手県紫波(しわ)町の駅前開発事業「オガールプロジェクト」は3位だった。ランキング上位には、施設や枠組みを作るだけでなく、その上の運営やコンテンツに重点を置く「ソフト重視」のプロジェクトが並ぶ。公民が連携した自治体の課題解決の取り組みは、着実に進化している。

 日経BP 総合研究所が運営するウェブサイト「新・公民連携最前線」は、全自治体を対象に行政視察の受け入れに関する実態を尋ねるアンケート調査を実施し、結果を「視察件数ランキング」として取りまとめた(調査概要・ランキング算出方法はこちら)。行政視察に関する調査は、本年で4年目となる。本記事では、総合ランキング、人口規模別ランキング、インバウンド視察ランキング、そして新型コロナウイルスの感染拡大による視察への影響を紹介する。

 具体的な有効回答一覧は、自治体別に「視察の多い事業一覧2020(東日本編)」「同(西日本編)」として、近く公開する。

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全回答事業の団体別一覧は、本特集内の「視察の多い事業一覧2020(東日本編)」「同(西日本編)」で報告する。

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「豊明モデル」が最多の271件、圧倒的トップに

 今回の調査でトップに立ったのは、愛知県豊明(とよあけ)市の「地域包括ケア 豊明モデル」だった。視察数は271件であり、第2位の神奈川県大和市の文化創造拠点「シリウス」を大きく引き離している。豊明モデルは、第2回(2018年)調査の53件、第3回(2019年)調査の110件から大きく数を伸ばし、年を追って注目度が上がっていることがうかがえる結果となった。

 豊明市の取り組みは、2018年7月にスタートした「高齢者が外出したくなるまちづくり」にさかのぼる。高齢になっても不自由なく暮らせる社会を目指し、民間企業と連携することにより、高齢者の生活を支えるサービスづくりを進めている。具体的には、温泉施設、スポーツクラブ、スーパーマーケット、お片づけ業者、ドラッグストア、楽器店などと「公的保険外サービス創出・促進に関する協定」を締結。行政と民間企業で協議してつくり上げたサービスを、地域包括支援センターやケアマネジャーなどを通じて市民に紹介している。

 官民が連携してつくったサービス例の1つは、住民同士が暮らしの困りごとを支える仕組み「おたがいさまセンターちゃっと」。高齢者あるいは何らかの障害を持つ人が、ごみ出しや買い物、洗濯といったちょっと手助けがほしいというとき、ほかの市民が「お互いさま」の気持ちで支える仕組みだ。個人のスキル、所有物、時間を共有することによるサービス「シェアリング・エコノミー」の一例と言えるだろう。運営主体は、JAあいち尾東農協、生活協同組合コープあいち、南医療生活協同組合である。

 また、新しい外出手段として、民間企業のコストシェアモデルによるオンデマンド型送迎サービス「チョイソコとよあけ」にも取り組んでいる。これは、複数の利用者の目的地と乗車時間を調整し、複数者が1台のタクシーを利用する乗り合い送迎サービス。事業主体は豊明市に隣接する刈谷市に本社を置くアイシン精機。2019年4月から有償の実証実験運行を行っており、2021年4月からの事業化を予定している。こうした注目度が高いモビリティ分野の取り組みも、視察数を押し上げたものとみられる。

「チョイソコとよあけ」の実証実験車両(写真提供:アイシン精機)

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 同市では、視察希望が増え、個別の対応が難しくなってきたことから、2019年度から新しい取り組みを始めている。自治体向けの地域包括ケアを担う人材育成プログラムを実施し、視察の受け皿としたのだ。同事業は、豊明市がNTTデータ経営研究所、藤田医科大学と共同で運営している。同プログラムには、2019年度に東海北陸管内の12の自治体が参加したほか、他県からのオブザーバー参加もあった。2020年度についても、全国から24の自治体が参加している(2019年度は「実践型地域づくり支援プログラム」として、2020年度は内容を強化して「実践型地域づくり人材育成プログラム」として実施)。

大和市の「シリウス」が2年連続2位、3年連続で300万人が来場

 今回、豊明モデルに続いたのは、前回も2位だった神奈川県大和市の文化創造拠点「シリウス」。視察件数は117件だった。

 シリウスは、「図書館城下町」を旗印とし、市民が気軽に本に触れる環境づくりを目指す大和市の中核施設である。図書館のほか、芸術文化ホール、生涯学習センター、屋内こども広場などで構成される。施設内のどこでも好きな場所で飲み物を飲んだり、勉強したり、おしゃべりしたりしながら本を楽しむことができることから、市民の憩いの場、交流の場となっている。

 図書館などの公共施設としては、全国的にも極めて活発に利用されている。2016年11月に開館した同施設は、2017年以降、3年連続で来館者が300万人を超えており、2019年9月には累計来館者数が900万人、2020年1月には1000万人を突破した。本調査でも、初回の2017年の14位から始まり、2018年の4位、2019年には2位、そして今回も2位と常に上位にランキング入りしている。

「シリウス」の外観(写真:茂木俊輔)

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 シリウスの施設運営は、公益施設の運営に得意な分野を持つ6社による共同企業体で実施している。6社のノウハウを集めて融合することで、市内外から人を集め続けているというわけだ。このノウハウの集積が累計来館者数につながり、常に上位にランキングされる視察数にも現れている。

3回連続トップだった岩手の「オガール」は3位に

 3位は、これまで3回連続トップだった紫波町の「オガールプロジェクト」。今回の視察件数は115件。各種メディアで紹介されたこともあって、初回調査の271件から徐々に減少傾向にはあるものの、引き続き人気が高いことが分かる。

オガールプロジェクトにおける各種施設。町庁舎のほか、店舗、スポーツ施設、宿泊施設などで構成される(写真:岩手県紫波町)

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 各施設の整備にあたって複数の手法を用いたことが、同プロジェクトが注目される理由の1つだろう。例えば、岩手県フットボールセンターや官民複合施設オガールプラザではPPPを、民間複合施設オガールベースやオガール保育園には定期借地を活用する。町庁舎にはPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)、官民複合施設オガールセンターには代理人方式を活用するなど、公民連携の学びのポイントが目白押しだ。このほか同地域には、エネルギーステーション(地域熱供給)やオガールタウン(宅地分譲、紫波型エコハウス)といった注目度が高い施設もある。

 同プロジェクトへの視察を促しているのが、視察研修コースをあらかじめ設定していること。2020年10月現在、目的別に3コースを用意している。「オガール標準コース」は、公有地活用や複合開発、デザインガイドライン、公民連携手法、施設概要といったオガール全般について視察したい人向け。「図書館(情報交流館)コース」はオガールプロジェクトにおける図書館の役割と運営、「循環型まちづくり・環境コース」は地域熱供給や紫波型エコハウスについて見たい場合のコースである。

 今回も、前回と同様、4位までが視察数100件を超えた。第4位は、香川県三豊市の「バイオマス資源化センターみとよ」。同センターの稼働が始まったのは2017年4月であり、比較的新しい施設である。同市の家庭や事業所が排出した可燃ごみを発酵・乾燥させ、固形燃料の原料としてリサイクルする。同市によると、焼却処分していた可燃ごみをエネルギーに変える「日本初の工場」だという。

ランキング上位は、地域が抱える課題を映す

 視察ランキングからは、現在の日本の地域社会が抱える課題が浮かび上がってくる。第1位「豊明モデル」からは、高齢者の生活支援、移動手段の確保、第4位の「バイオマス資源化センターみとよ」からは、「ごみ処理施設の老朽化」や「廃棄物の利活用」が見えてくる。第6位の「人と防災未来センター」(兵庫県)、第8位の「千歳市防災学習交流センター『そなえーる』」(北海道千歳市)などからは、「防災・減災」が地域社会にとって一段と重要なテーマになっていることが分かる。

 また、「豊明モデル」のほか、第7位にランキングした茨城県つくば市の「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化」、第9位の滋賀県大津市「議会改革」のように、視察対象に該当施設いわゆる「ハコ」が存在しないケースが多く見られる。視察対象が施設だとしても、シリウスやオガールのように運営ノウハウに注目が集まるケースが多い。自治体の官民連携の取り組みにおいては、「ソフト重視」の傾向が強まっていると言えるだろう。

ランキングINDEX

  • ■ 全国自治体・視察件数ランキング2020

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