Home インスタグラマー インスタグラム出身の写真家が語る、SNSの希望、息苦しさ、可能性 石井リナ×ENO SHOHKI – 朝日新聞

インスタグラム出身の写真家が語る、SNSの希望、息苦しさ、可能性 石井リナ×ENO SHOHKI – 朝日新聞

46 second read
0
56

社会問題からセックスまで。現代を生きる女性に様々な選択肢を提案するエンパワーメントメディア「BLAST」。その運営会社であるBLAST Inc.のCEOを務めながら、SNSコンサルタントとしても活躍する石井リナが、ミレニアル世代にフォーカス。

特に1990年前後に生まれた人は、インターネットネイティブな環境で培った柔軟な感覚で、様々な新しい働き方に取り組んでいる。学生時代にガラケーを持ち、インターネットの普及とともに育ってきた人々は、どんな価値観を持ち、何を思考しているのだろうか。世代の狭間に生まれ、時にハブとなり得る「ミレニアル世代」を深掘りする。

今回は、インスタグラムをきっかけにフォトグラファーとしての活動をはじめたENO SHOHKIとの対談。SNS登場以降のミレニアル世代のキャリアと、「インスタ映え」に代表されるようなSNS上での表現の関係性について語り合う。

デザインより写真の方が楽しくなっちゃって

石井:SHOHKIくんは、錚々(そうそう)たるクライアントから指名されるフォトグラファーとして活動しているけど、以前、インスタグラムがきっかけでフォトグラファーになったという話をしてくれていたよね。

ENO:そうだね。きっかけになったのは間違いなくインスタグラム。 

石井:そこに至るまでの話を教えてほしいな。

ENO:僕は多摩美術大学のプロダクトデザイン学科に通っていたんだけど、一人でニューヨークに行ったとき衝撃を受けた。進路相談のとき、教授にアメリカで勉強したいと相談したら、アメリカの大学と一緒にやっている共同研究プロジェクトに参加させてもらえることになって、プロダクトデザインをやることになったんだ。

当時は、それっぽくなる写真加工アプリとしてインスタグラムを使っていたんだけど、アメリカではみんなコミュニケーションツールとして使っていたんだよね。向こうで生活する中で、自然とインスタグラムを使うようになったかな。

石井:今から5年くらい前、まだ日本ではインスタは流行し始めたくらいだったよね。

ENO:そうだね。最初の方はスマホの写真を「これスマホなの?」っていう反応がめっちゃ楽しかった。当時はポートレートモードもなかったし、いろんな加工アプリを使って、グラフィックっぽくしたりして遊んでた。

石井:そこから少しずつ写真の世界にのめりこんでいったんだね。

ENO:写真の道に進もうとした決定的な理由は「デザイン、めっちゃつまんねー」って思ってしまったことなんだよね……(笑)。ロサンゼルスの大学に日本人の教授が一人いるんだけど、「独立してデザイン事務所を立ち上げるから手伝わないか?」って誘ってもらって。そのときに初めて自分用のフルサイズのカメラを手に入れて、ロサンゼルスのデザイン事務所で実践的なデザインをやっていたんだけど、とにかくデザインより写真の方が楽しくなっちゃって。

石井:デザインじゃない、って気づいたんだね。

ENO:初めて自分のカメラを買ったこともあって、とにかくいろんな表現ができるのが楽しかった。案の定、教授に見透かされて、「デザインの仕事、あんまり楽しくなさそうだよ」って言われて。「それで一生食っていくっていうことに命を注いだ方がいい」と言われて、それは何なのか?と考えたときに、写真だと自覚した。

石井:なるほど。

ENO:でも、スタジオのカメラマンとか興味ないし、師匠に弟子入りみたいなこともするつもりはなかったし、カメラマンにいきなりなれるわけがないっていう固定観念があった。写真について学んできたわけでもないから。

石井:フォトグラファーの人たちは、一般的に師匠につくんだよね、SNSで仕事している人が多いから、私もそういう文化をあんまり知らなかった。

ENO:そんなときに、たまたま多摩美でテキスタイルデザインをやっていたインドネシア人の友達が、卒業制作での写真を依頼してくれた。日本に住んでいるインドネシア人の人たちはコミュニティーがつながっているんだけど、その友達がSNSにあげた写真を見たインドネシアの人から、訪日旅行客を撮影する仕事がもらえるようになった。

石井:スタートからグローバルな流れがあったんだね。それから写真を仕事にする上で、インスタの使い方に気をつけたりしていた?

ENO:「毎日1枚ずつコンスタントにあげる」っていう基本的なことかな。縦でも横でも撮ったり、自由にやってたよ。

ENO SHOHKI、石井リナ

SNSによってクリエーティブに制限がかかる

石井:仕事として写真を選んだ一番のポイントは?

ENO:プロダクトデザインは、半年ぐらいかけて、カラーバリエーションとか素材を検証することがあるから、プロセスが長い割にはお金にならない。そのプロダクトを使っている人を見て感動することはあるけれど、僕は結果がすぐ見たいから写真のスピード感が性に合っているんだよ。撮って、SNSにあげればいろんな人が見て、反応もすぐにわかる。

石井:写真の表現については、どんな風に考えている?

ENO:最近は、インスタに囚(とら)われないようにしてる。去年の頭ぐらいから息苦しさを感じていて。デザイナーっぽい思考もあるから、スマートフォンに最適化するなら、縦型画像で画面上で目に入る時間を長くする……とか考えてしまう。構図としての美しさより、縦で撮ることを優先することもある。自分の中でクリエイティブに制限がかかっちゃって、気づいたらすごく息苦しくなってきたんだ。

石井:SNSがきっかけでクリエーティブに制限がかかるって、すごく興味深い話。

ENO:「いいね」の数だけに囚われるのもおかしいよね。だから、まずTumblrをはじめて、SNSの上での表現の仕方をより自由なものにしてみようと思った。Twitterは避けていたんだけど、やってみたら肌に合っていたな。リアルな反応が来るし、言葉のコミュニケーションも大切だよね。

石井:Twitterはインスタより思想が伝わりやすいのかもね。メディアで記事を掲載するときにも、SEOを気にしようとか、バズらせようとか、インターネットとかSNSの仕組みに依存した正解が出てきちゃって、本来伝えなきゃいけないこと、描きたいことがないがしろにされている場合もある。仕組み的な限界が見えてきているよね。

ENO SHOHKI、石井リナ

右腕が折れてたらやばかった。シャッターボタンって右側にあるから

石井:これまで手がけた印象的な仕事はある?

ENO:アディダスの仕事で、スパイクを撮ったことが特に印象に残っている。もともと靴がすごく好きで。中学校の頃とか先輩が履かなくなったスパイクをもらって、無駄に10足くらい部屋に飾っていた。撮影のとき、新作のスパイクが家にたくさん送られてきて、もちろん撮影したあとに返すんだけど、夢のような状況なんだよね。今の自分のベストを尽くすべきだな、と思って頑張った。

石井:それはすごくうれしいよね。最近「好きを仕事に」みたいな相談依頼をもらったりするんだけど、私は好きなことを仕事にしてるわけではなくて、SNSのコンサルタントをしたときも、他の人より得意だからやってたら褒められて、求められるようになって、それも悪くないな、って思って続けてる。BLASTも、好きなことってより、使命だなって思っている。私は「好き」をそのまま仕事にしたことはまだないんだけど、SHOHKIくんは、その「好き」って気持ちをどう自分の中で受け止めてる?

ENO:僕は「あ、これが好きだったんだ」って周りの人から気づかされることが多いよ。サッカーとかも小1から今まで20年以上続けているけど、「好きなんじゃない?」って友人に言われて、「あ、一般的に言うとこれ俺好きなんだな」と気づいた(笑)。

写真を撮ることはとにかく楽しくて、自転車に乗ってとにかく色んな所に撮りに行った。睡眠時間を削ることもあって、それを見た親から「写真は好きそうだけど、逆にデザインはそうでもないんじゃない?」みたいな感じで言われて(笑)。

石井:理屈より先に行動があって、あとからそれに頭が気づいていくみたいなことなんだね。それがちゃんと仕事って形になってるところがいいと思う。一回、取材の時に事故って左腕骨折しながら来たときあったもんね(笑)。

ENO SHOHKI、石井リナ

ENO:うん。自転車事故で左の鎖骨が2カ所折れて血まみれになったことある(笑)。右腕が折れてたらやばかったよ。シャッターボタンは右側にあるから。

表面的にやらないで、人間性を見ようとしてる

石井:撮影で一番テンションが上がるときってどんな時?

ENO:いい意味で想像を裏切られたときはめっちゃテンション上がる。撮影するときって、例えば海で撮るからきっと光はこんな感じ、みたいに想像をしていくんだよね。でも、実際は全然違う光の質感があって、抜け方がすごく綺麗だとか、そういう想像を超える瞬間があるんだよね。雨だけど行ってみたら晴れの日よりずっと良かった、みたいな。

石井:人を撮るときは、どんなことを考えている?

ENO:どこかにその人の魅力を発見するようにしている。この人はどういう人かなって自然と想像してるかも。

石井:人となりを探るんだ。

ENO:優しそうだな、とか、お金持ちそうだな、とか、目をつぶってるから緊張してるんだろうな、とか。もちろん格好良く撮れるアングルを探すってのもあるけど、格好良さは主観だから難しい。表面的にやらないで、その人の人間性みたいなのを見ようとしているかな。

石井:最後に、今後やりたい仕事について教えてください。

ENO:今年は日本を撮りたい。オリンピックを視野に入れるっていうのもあるけど、伝統工芸・伝統芸能に興味が湧いてる。さっきリナちゃんが言ってた「使命」に近くてさ、僕のインスタのフォロワーは外国人が80%ぐらいで、日本が好きな外国の人たちがフォローしてくれてるんだよね。僕は東京で生まれて、ずっと関東で生きてきたし、日本のことを全然知らない。だからこそ、まだ知らない日本を発見したときに素直に感動したんだよね。リナちゃんがCompassで「能」の撮影に誘ってくれたときに、これだ!って思ったんだよ。

石井:あれがきっかけなんだ! うれしい。

ENO:インスタグラム社の企画で、GINZA SIXの地下にある観世能楽堂に入れてもらってね。普段は絶対撮れないところなんだけど、好きに撮ることができた。あまりにもすごすぎる体験で、能をやってる人をひたすら撮って、着物とかもとにかく綺麗でめちゃくちゃ刺さった。

石井:そのときの写真がこれだね。

ENO:今後どうしていきたいか? 何を撮りたいか? ということで言えば、自分が素直に感動して撮っていることに対して、海外の人が好意的に反応してくれていると思う。だから僕が感動したこの美しさを、もっと伝えたいなって。

石井:日本の伝統工芸とか伝統的な文化が、海外にもっと伝えるチャンスのタイミングでもあるよね。清水寺のインスタアカウントがすごくかっこよくて。16万フォロワーいて、海外のフォロワーさんも多いんだよね。英語でキャプションも書いていて、だから外国の人たちも手を合わせてるやつに全部この絵文字🙏でコメントしたりしてて、ビジュアルコミュニケーションだなって。

ENO:これ🙏いいね、使ってみよう。

ENO SHOHKI、石井リナ

<編集後記>

ミレニアル世代のキャリアを語る上で、「SNS」は避けて通れないキーワードだ。ENO SHOHKIはインスタグラムをひとつの足がかりとして、写真の世界で独自の轍(わだち)を切りひらいている。石井リナもまた、SNSコンサルタントという働き方を自身のキャリアのメルクマールと捉えている。仕組みによって背中を押されながら、同時にその仕組みならではの制限に悩む。普及してから10年も経たずに、キャリアのあり方を大きく変化させたSNSという存在には、把握できない未知な要素もまだまだ多い。SNSの清濁を併せのみながら、新しい時代の生き方を実践していく2人から今後も目が離せない。

(文:長嶋太陽、撮影:なかむらしんたろう)

Let’s block ads! (Why?)


Source link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Check Also

NGTモデル起用のファッションブランドが釈明 – 日刊スポーツ

荻野由佳(17年12月1日撮影) NGT48の荻野由佳(20)をモデルに起用したファッションブランド「Heat … …