Home モデル ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編) – 朝日新聞社

ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編) – 朝日新聞社

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世界がボーダーレスになり、多様性が叫ばれる時代。ファッションはどこに向かうのだろうか。近年のデザイナーコレクションに見られる「変化」とは? 1月に開催された2019年春夏パリ・オートクチュールのあと、日本を代表するトップモデルの冨永 愛さんと、朝日新聞でファッションを取材する高橋牧子編集委員が語り合った。(聞き手・文=中津海麻子)</span>

オートクチュールは「モードの実験場」

高橋 オートクチュールがここ数年、とてもおもしろくなっています。もともとはひと握りの富裕層のためのものであり、ブランド全体の広告塔の役割を担うショーでしたが、今は「モードの実験場」のようになっていて。プレタポルテが普通っぽいデザインになったり、コラボで同質化したりする中、新しいことをやろう、時代に寄り添おう、という気持ちがオートクチュールには強く現れている。それは1月のコレクションでも感じました。

冨永 私は、プレタポルテよりオートクチュールの方が好きなんです。デザイナーやデザインチームの思いが詰まっていると感じるから。今回8年ぶりに訪れたのですが、私も様々な変化を感じました。たとえば、モデルが若返ったなぁ、と。オートクチュールのショーが若いモデルの登竜門のようになっていて。

高橋 それはありますね。一方で、ヴァレンティノのフィナーレで、スーパーモデルとして一世を風靡(ふうび)したナオミ・キャンベルがランウェーに現れたのはうれしい驚きでした。

冨永 圧巻でしたね! 40代を迎えてなお、上半身シースルーで堂々と歩く姿は、めちゃくちゃカッコよかった。ほかにも、マリアカルラやリヤ・ケベデ、ナタリア・ヴォディアノヴァなど私と同世代のモデルたちも登場して。

ナオミ・キャンベルが、ヴァレンティノ2019年春夏パリ・オートクチュールのフィナーレに登場

年齢、人種、体形……多様性を意識

高橋 モデルの年齢もそうですが、体形も肌の色も様々で、ジェンダーフリーになり、ファッション界全体がダイバーシティーを意識していると強く感じます。

冨永 メンズとレディースの合同ショーをやるデザイナーも増えましたね。様々な変化を目の当たりにすると同時に、しかし、これだけ時代も社会も変わって激動している中で、実はファッション業界はあまり変わってこなかったんじゃないか。もっと言うと、すごく遅れているのでは――。ふとそう思いました。私は2000年ごろからコレクションサーキットを始めたのですが、あのころは日本人どころかアジア人すらほとんど起用されなかった。20年近く経ってようやく、という感があります。</span>

高橋 そうかもしれないですね。ファッションそのものはいつも時代に先駆けて新しいものを生み出してきたけれど、意外と男社会だし、根本的な部分が遅れているのかも。2018/19年秋冬オートクチュールコレクションで、ゴルチエは「Smoking no smoking?」をテーマに、スモーキングジャケット、つまりタキシードを再構築したジェンダーレスなデザインを発表しました。この時代にランウェー上でモデルがタバコをくゆらせて、それもインパクトがあったのですが、地元メディアにテーマの意味を問われたゴルチエはこう答えたんです。「自分は1980年代にアンドロジナス・ルックなどを通じて男女は平等であると訴えた。でも、結局何も変わってない。それが言いたかったのだ」と。去年はハリウッドでセクハラが問題になり、被害を訴える女性たちが声をあげた「#Me Too」のムーブメントが世界中に広まりました。そういった動きも影響しているのかもしれません。</span>

ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編)

ジャンポール・ゴルチエ 2018/19年春夏パリ・オートクチュールコレクション(撮影・大原広和)

サステナブルでなければ、ファッションではない時代に

高橋 それから、多様性に加えファッションを語る上で重要なキーワードになっているのが、「エシカル」や「サステナブル」。今や「サステナブルでなければファッションではない」という認識が当たり前になった。そうした姿勢や取り組みを見せないとビジネスできない、誰も買ってくれないという状況まできています。</span>

冨永 私もエシカルについては色々なところでお話ししているのですが、ものすごく大きな波が押し寄せていると感じています。それほど地球環境がギリギリのところまで差し迫っていることだと思うのです。</span>

高橋 ある意味、ファッションは環境を壊し続けてきた業界でもある。「やっと」という感はありますね。今回、冨永さんが着ているアズディン アライアも、1シーズンで着捨てることが前提で作っていない。一生着続けられるかもしれない質の高さと、そうした服を作るマインドは、まさにサステナブル。考えてみれば、注文主のために1点ものの洋服を作り、その価値がどんどん上がって、やがては美術館に収蔵されることもあるオートクチュールは、そもそも永遠性のあるファッションなのかも。</span>

冨永 確かに究極のサステナブルですね。アライアはずっと撮影で着てみたかったので、今回念願がかないました。これからは、作る側も選ぶ側もエコや社会的倫理を意識する時代になっているとは感じます。でも、やっぱりファッションは「夢」であり「魔法」でもある。どこのブランドも同じような服を作ってほしくないし、そんなつまらない世の中にしちゃいけない! とも思うのです。エシカルやサスティナブルをしっかり考えながらも、着る人がその服を着ることで夢を見ることができる。ブランドやデザイナーにはそんな服を作り続けてほしいですね。</span>

ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編)

冨永愛さん(右)と、高橋牧子編集委員(撮影・馬場磨貴)

今も忘れられないショー</span>

高橋 先ほど冨永さんがランウェーにデビューしたころの話が出ましたが、冨永さんの登場は本当に衝撃的でした。それまでの日本人モデルって、オリエンタルなものを表現するときや着物を着せるためだけに使われる程度で。ところが冨永さんは「普通のスーパーモデル」として出てきた。グッチでもドルチェ&ガッバーナでも普通に着こなし、普通にウォーキングしていた。ほかのスーパーモデルに全く引けを取らなかったんです。忘れられないのが2003年の秋冬コレクション。トム・フォードがいたころのグッチのショーで、ランウェーに花びらが敷き詰められていて……。</span>

冨永 ああ、白い花びらでした。</span>

ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編)

冨永愛さんが花びらのランウエーを歩いた、2003年秋冬グッチコレクション(撮影=大原広和)

高橋 モデルはピンヒールでウォーキングするのですが、みんな滑ったり転んだり。冨永さんが出てくるときは、身内意識でヒヤヒヤ、ハラハラしちゃって(笑)。ところがそんな心配をよそに、さっそうとカッコよく歩き切ったのです。日本人として本当に誇らしかった。</span>

冨永 あれ、花びらに水分があるからツルツル滑ったんです。ランウェーを歩き終えてバックヤードに戻ったら、ピンヒールに花びらが串刺し状態に(笑)。でも、歩いていてもめちゃくちゃキレイで、私も忘れられないショーの一つです。</span>

高橋 不敵といったら失礼かもしれないけど、「私には敵などいない」というような凜(りん)とした姿が目に焼き付いて。感動的でした。もう一つ、同じく03年の秋冬コレクションのアレキサンダー・マックイーンのショーもものすごくインパクトがありました。</span>

冨永 フィナーレで「雪女」をやった?</span>

高橋 そう!</span>

ファッションはどこへ向かうのか? 【対談】モデル・冨永愛×朝日新聞編集委員・高橋牧子(前編)

冨永愛さん アレキサンダー・マックイーン2003年秋冬コレクション(撮影=大原広和)

冨永 ランウェーが上下2層になっていて、ほかのモデルは下を歩くのですが、最後に私が上部分の透明のトンネルを歩く……という演出でした。分厚い布団のような打ち掛けを着て、正面にある大きなファンからものすごい強風がブワーッと吹いてくる。そこに向かって歩くのもなかなか大変だったんだけど、マックイーンは、イナバウアーというか、映画『マトリックス』というか、体を反らすポージングをして欲しいって。いやいや、こんな強風の中で重い衣装着て倒れちゃうよと(笑)。そう言いはしたものの、なんとかやり遂げました。マックイーンがまだ存命のころで、彼は本当に喜んでくれましたね。</span>

高橋 冨永さんがコレクションに出ていたそのころに比べて、ファッションへの熱は変化していると感じますか?</span>

冨永 どうなんだろう……。今回のショーでもナオミが登場したときの盛り上がりを見ると、モデルのカリスマ性のようなものはかつてに比べてなくなっているようには感じます。でも一方で、インフルエンサーと呼ばれる人たちが影響力を持ったり、あるいは先端の科学技術がファッションに活用されるようになったりなど、色々なジャンルや業種の人たちがかかわるようになった。そういう意味では、以前とは形を変えて盛り上がってきている、と言えるのかもしれません。</span>

(後編は3月14日配信予定です)</span>

冨永愛さん着用
ドレス、ベルト、シューズ/アライア 電話:03-4461-8340
リング/カルティエ 電話:03-4461-8620

冨永 愛(とみなが・あい)
17歳でNYコレクションにデビューし、一躍話題となる。以後約10年間にわたり、世界の第一線でトップモデルとして活躍。その後、拠点を東京に移し、モデルのほか、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティーなど様々な分野にも挑戦。チャリティー、社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝える活動など、その活躍の場を広げている。</span>
冨永愛オフィシャルサイト http://www.tominagaai.net/

高橋牧子(たかはし・まきこ)
朝日新聞社ファッション担当編集委員。パリやニューヨーク、東京など国内外のデザイナーコレクションや街の流行、ファッションビジネスなどを取材。ファッションと時代との関わりを追求している。連載「やせすぎモデル問題・美の基準とは」「モードの舞台裏」「ファッションってなに?」など。</span>

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