
「俺がやったみたいに、刑務所の中でクスリをさばけたら、大したもんだよ」と豪語するモハメド・ムスタドラフ(Mohamed Moustadraf)さん(48)。元麻薬密売人。タトゥーの入った腕に金の時計をはめ、髪は後ろで束ね、上下ジャージー姿だ。合計23年間、獄中で暮らした。
ムスタドラフさんは、モロッコで人気の元受刑者ユーチューバー約20人のうちの一人だ。彼らの多くには数百万人の視聴者がついている。
彼らは囚人同士の凶暴な対立や、看守への報復などの話でフォロワーたちをうならせ、刑務所内の虐待や過密に対して怒りをぶつける。
「刑務所の中でも外でも、ずいぶん金を稼いでいた」と言うムスタドラフさん。子どもは3人いる。「ただ、自由だけがなかった。今は、それを生かして他の人たち、特に若者と経験をシェアしたい」。自分の前科を美化することが目的ではないと強調する。
彼にユーチューブを勧めたのは、ミュージシャンのグナウィ(Gnawi)さんらラッパーの友人たちだ。グナウィさんはインスタグラム(Instagram)のライブ配信で警察官を侮辱した罪で、1年の実刑判決を受けた。
■「セラピーのようだ」
元受刑者イリヤス・コラリィ(Ilyas Korrari)さんも、ユーチューブでヒット中だ。何千人ものサブスクライバーに心を開くことは「セラピーのようだ」と言う。
「以前はみんなが自分を避けようとしたり、変な目で見たり、怖がったりした」とコラリィさん。「過ちを犯した者に対して世間は冷酷だから、自分の中に憎しみと復讐(ふくしゅう)心が満ちていた。でも、カメラのおかげで立ち直った」
彼も元麻薬密売人。38年の人生のうち、17年を獄中で過ごしている。最後に出所した2018年以来、人生を変えようと決意したという。現在ユーチューブで24万人のサブスクライバーを持ち、動画の視聴回数は計2100万ビューを超えている。
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