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ロリータは私の戦闘服…青木美沙子 – 読売新聞

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 日本ロリータ協会、という組織があります。日本のロリータファッションを世界に向けて発信しているその協会の会長を務めるのは、青木美沙子さん(37)。高校時代にロリータファッションに出会ってから、20年間ロリータモデルを務め続けてきました。

 普段からロリータファッションで通している青木さんですが、このファッションを続けていくには、「世間の目」と闘う必要がありました。着たいファッションを着ているだけなのに……。30年後、そんな日本の「世間」は変わっているでしょうか。青木さんに話を聞いてみました。

 高校生のとき、ロリータ系の雑誌「KERA」に原宿でスカウトされて、読者モデルを務めたことが、そもそもの始まりでした。90年代のその頃、街中にロリータファッションの人はほとんどいませんでした。街中でロリータファッションの人を見るようになったのは、2004年の映画「下妻物語」以降ではないでしょうか。この映画では主役の深田恭子さんがロリータファッションを貫く姿が描かれていて、そうした影響で一般に認知されるようになったと思います。それより以前は、今よりもアングラなイメージのファッションだったのです。

 私は元々、リボンとかかわいいものが好きでした。それで、丸襟のブラウスにボンネット、フリルやリボンでふりふりになれるロリータファッションに出会い、「オトナになってもお姫様になれるんだ!」とときめいてしまいました……いいえ、恋に落ちてしまったんです。

 ただ、一般の認知度は上がったとは言え、偏見はひどいものでした。「こりん星から来たの?」「マカロンしか食べないの?」などと聞かれることはしょっちゅう。電車の中で酔っ払いに絡まれたり、知らないおじいちゃんに「そんなバカみたいな格好をして」と怒られたりすることもありました。

 特に男性から見ると、リボンやレースは子どもが着るものというイメージがあるみたいで、ロリータファッションを着た私自身を真剣に取り合ってくれる人はほとんどいませんでした。「自分の連れている女性が目立つ格好をしているのがイヤ」「ロリータファッションの女性が好きなんだと思われると自分がロリコンだと思われるからイヤ」という人が日本の男性には多いようです。こっちはファッションを楽しんでいるだけなのに。

 最近では、新型コロナの感染拡大で自粛ムードにもかかわらずこういう格好をしていると、「浮かれている」と思われてしまい、「こんなご時世なのに自分だけ浮かれているんじゃないよ」といった言葉を浴びせられることもあります。

 私は看護師の仕事もしています。命の現場は時にシリアスな緊張感に満ちています。以前務めていた病院では、師長から服装のことで注意を受けました。もちろん勤務中はナース服を着ていたのですが、通勤の行き帰りで着ていたロリータファッションを「ちゃんとしているように見られない」という理由で見とがめられたのです。「地味な格好がまじめ、派手な格好は不まじめ」、そんなイメージをみなさん暗黙の了解として持っているんですね。そういう世間の目と闘うことになるので、私にとってはロリータファッションというのは「戦闘服」でもあるのです。

 そんな現状ですが、30年後には今よりも好きなファッションをしやすくなるのではないでしょうか。年代が上の方はなかなか受け入れられないということが多いようですが、今の若い人はこうしたファッションも受け入れてきていると思います。ロリータファッションに関して言えば、それは90年代頃から登場したファッションが定着してきたという流れもあると思いますが、それ以上にファッションの多様化が認められる土壌があるのではないでしょうか。

 その要因として大きいのはSNSだと思います。ロリータファッションっていうのはインスタ映えするんですよ。ロリータに限らず、インスタではさまざまなファッションがあがりますよね。それによってファッションの多様化に目が慣れるというのが大きいのではないでしょうか。「こういうファッションの人もいるんだな」と、自分のテリトリーにいないような人のファッションにも触れることができるわけですから。

 30年後までには、「こういうファッションが一般的」とか「普通はこんな格好するよね」という常識がなくなればいいな、と思います。特に、年齢とファッションに関係があるという意識が強いですよね。雑誌などでも「20代のファッション」「30代のファッション」というように年代に応じてファッションの差があるという意識がこれまで作られてきたと思います。「20代でこの色はババくさい」とか「40代でミニスカートは恥ずかしい」みたいなことを内面化して、自分の着たいファッションが着られないのはとても残念だと思います。

 私自身は、他の人がどういうファッションをしていてもそこまで興味はないんですよね。むしろ私のファッションにいろいろ言ってくる人たちが、どうしてそんなに他人のファッションに興味を持っているのだろう、と不思議に思います。私は自分がかわいければそれでいいです。みんなもっと自分勝手に生きられればいいですよね。

 これはファッションに限らず、ライフスタイルも含めて、そう変わっていけばいいなと思います。「20代後半で結婚するのが普通」「子どもを産むのが女性の幸せ」。そういう意識はやはり根強く社会に残っていますね。自分自身のことを考えても、35歳を過ぎたくらいから友だちのほとんどが結婚し、子育てを始めているという状況に「自分はひとりぼっちだな」という思いが強くなりました。私はロリータファッションを卒業もしていないし、結婚もしていません。

 20代の頃は自分が30代になってもロリータファッションを続けているとは思っていませんでした。でも案外ずっと続けていると違和感もなくなりますし、あとの世代の人に対しても、「やめなくてもいいんだ」という選択肢を示すことができます。もちろん、子どもを持っていてもロリータファッションを続けている人もいますよ。今は、もはやそういう結婚や出産のことであせる気持ちはなくなりましたが、40を超えたらまたあせり始めるかもしれません。でも、年齢相応のファッション、年齢相応のライフスタイルとして「これが普通」というもの以外は認められにくい社会は変わっていくといいな、というふうには思います。

 日本ロリータ協会の会員はいま2000人ほど。新型コロナの感染拡大以降はできなくなっていますが、会長として海外に「お茶会」に呼ばれて行き、日本発祥のロリータファッションが世界に広まっていくよう活動をしてきました。最近ロリータファッションがブームになっているのは中国です。この5年くらいでブームが拡大し、ロリータブランドもロリータファッションの子も日本より多いのが現状です。ロリータファッションって全身そろえると10万円くらいするんですけど、中国のブランドはもっと安いので、中国から日本に進出するロリータブランドも出てきています。

 新型コロナでアパレル業界は悪影響を受けていますが、ロリータは「どういう時でもこの格好をしていたい」というコアなファンが多いためか、あまりブランドには悪影響がないと聞いています。最近流行しているのは「おうちロリータ」。外に着ていく勇気はないけど、おうちでだったら着てみたい、という人がロリータファッションを楽しむという流れがあり、レンタルしたロリータファッションを着て家で撮影会をやるというのがコロナではやりました。「なんだ、みんな着てみたいんじゃん」と私としてはやや拍子抜けした思いもしましたが、みなさんがロリータファッションを楽しんでくれるのは、もちろんとてもうれしいことです。

 ロリータの業界の中でも流行があるんですよ。「下妻物語」がはやった2000年代にはクラシカルロリータが流行し、10年前にはレースやフリルがいっぱいついた無地がはやりました。そこからキャンディーやマカロン、パフェなどのかわいらしいものがプリントされたパステルカラーの生地に流行が移り、現在では再びクラシカルロリータが流行しています。

 今日の私のファッションは、取材場所に指定していただいた「カフェ シャンソニエ アコリット」(東京都豊島区)の雰囲気に合わせて着てきました。「懐古ロリータ」と言われる、ボンネットなど随所にレースをあしらったファッションです。くすみピンクが落ち着いた雰囲気を出しているでしょう?

 30年後は私自身は67歳。ロリータファッションは着続けていると思いますよ。黒柳徹子さんのように、自身のファッションを貫く女性でありたいです。「下妻物語」でロリータファッションを披露していた深田恭子さんにも、むしろ今着てみてほしい。今の深田さんの方が、もしかしたらロリータファッションが似合うかもしれません。

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