Home モデル 個人情報流出 IT業界モデルに不信感

個人情報流出 IT業界モデルに不信感

6 second read
0
273


フェイスブックからの個人情報の不正取得について証言するケンブリッジ・アナリティカ元従業員のクリストファー・ワイリー氏の映像=英下院で3月27日、AP

フェイスブックからの個人情報流出の構図

 【ニューヨーク國枝すみれ】20億人以上の利用者を持つ世界最大のソーシャルメディア・米フェイスブック(FB)が揺れている。2016年米大統領選で当選したトランプ大統領の陣営のデジタル戦略を担ったデータ分析会社が、FBの利用者8700万人(推計)の個人情報を不正に取得したためだ。膨大な個人情報を収益源とするIT業界のビジネスモデルにも、不信の目が向けられる事態になっている。

何が起きたのか

 このデータ分析会社はケンブリッジ・アナリティカ(CA)。「米国の有権者約2億3000万人について5000種のデジタル情報を持っています。この貴重な情報を使い、あなた向けの有権者を選び出し、説得して、投票させます」。トランプ陣営のためにデジタル情報収集から広告制作まで請け負ったCAはウェブサイトで堂々とうたう。「五大陸で100以上の選挙運動に関与。米大統領選の勝利に決定的な役割を担いました」

 CAは13年6月、英国SCLグループの米拠点として設立された。SCLは英米政府を顧客とし、テロ組織による若者の過激化防止のための心理作戦などに従事するコンサルティング会社だ。CAにはトランプ陣営への最大の資金援助者である大富豪ロバート・マーサー氏が出資。後にトランプ氏の側近となるスティーブ・バノン氏が副社長に就任した。

 個人情報の不正取得の詳細は米紙ニューヨーク・タイムズや英メディアが先月17日、一斉に報道した。

 CAが最初に目を付けたのは、当時英ケンブリッジで研究活動をしていた米スタンフォード大経営大学院のマイケル・コシンスキ准教授だった。FBの「いいね!」を押した投稿を分析することで、利用者の性格や政治志向だけでなく、将来の行動さえも正確に予測できるという研究を発表していたためだ。

 CAは「共同事業」を持ちかけたコシンスキ氏に断られ、今度はコシンスキ氏の研究者仲間でロシア系米国人のアレクサンダー・コーガン氏に近づいた。コーガン氏は、FB上に心理テストのアプリを作成。少額の対価と引き換えに回答したFB利用者27万人から、研究目的として個人情報の提供を受けた。その際、利用者の「友人」の情報も無断で収集。こうして集めた8700万人分の情報は、利用者やその「友人」の同意を得ることなく、CA側に横流しされたという。

 FBは15年にCAに情報の消去を要求し、CAからは「消去した」との連絡を受けたと説明する。CAも「FBから得た情報は(大統領選で)利用しなかった」と主張する。

 こうした主張を否定する証言をしたのが、CA元従業員のクリストファー・ワイリー氏(28)だ。英紙ガーディアンの取材に「(コーガン氏への支払いなどで)100万ドル(約1億円)を費やして集めた情報」をCAが削除するわけがないとし、米大統領選で使用された可能性を強く示唆した。FBの4日の発表では、CAに渡った8700万人の個人情報のうち約8割が米国人のものだった。

売買は野放し状態

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、過去にはFB利用者4億2000万人の個人情報が流出したこともある。より深刻な問題は、利用者が知らないうちに自分の情報が集められ、売買の対象となり、ビジネスや選挙運動に利用されている点だ。米国には事実上、デジタル空間にあふれる個人情報の売買を規制する法律はない。

 インターネット上の検索内容、ウェブサイト閲覧記録、オンラインショッピング購入歴--。消費者がパソコンやスマートフォンを使った活動記録はデジタル空間に残り、その情報は売買の対象となる。誰が何を欲しがり、何を心配しているかが分かれば、それに応じた商品を売り込むのが容易になるためだ。

 FBも利用者の個人情報を収益源にしており、広告料金を払った業者などには利用者にアクセスすることを許可してきた。「カスタム・オーディエンス」と呼ばれるFBの機能を使うことで、「小さな子供がいる主婦」などの条件を設定してFB利用者から対象者を絞り込み、広告を送ることができる。

 デジタル情報の政治利用も16年大統領選で新たな段階に達した。CAは勝敗のカギを握る激戦州で、どの有権者がどの政治課題に興味を持っているかや、誰がトランプ氏に投票する可能性があるのかさえも把握していた。

 「市民はプライバシーを失い、ソーシャルメディアを使った情報操作(プロパガンダ)に対して脆弱(ぜいじゃく)になっている」。デジタルメディアを専門とする米パーソンズ美術大のデビッド・キャロル准教授は警告する。デジタル空間に蓄積される情報を分析する人工知能(AI)技術の進展で、個人の住所や収入、知能指数まで明らかにされるようになり、選挙では特定の層が集中的なプロパガンダの対象になる恐れもあるという。

利用者の個人情報流出を巡り批判にさらされるFBのCEOのザッカーバーグ氏=ロイター

規制は可能か

 米連邦取引委員会(FTC)は先月26日、FBに対する調査開始を宣言。上院司法委員会も同日、FB、グーグル、ツイッター3社の最高経営責任者(CEO)を召喚すると発表した。翌27日には個人情報を収集されプライバシー権を侵害されたとして、FBに対する集団訴訟も起きた。

 ソーシャルメディアへの不信感は数年前から高まりつつあり、米ピュー・リサーチ・センターの16年の調査では個人情報の保護に関し「まったく信頼していない」「あまり信頼していない」は計51%に達した。今回の情報流出問題を受け、FBなどIT企業の株価も一時急落した。

 ただ、米国では、膨大な個人情報をどう利用できるかがビッグデータ時代の経済で成功する鍵と認識されている。こうした事情もあり、ソーシャルメディアの専門家で、米非政府組織(NGO)「未来研究所」のサミュエル・ウーリー氏は、信頼回復に向けたIT業界による自主規制の実現には懐疑的だ。他方、政府が強圧的な規制を作った場合、「組織化やコミュニケーションの手段といったソーシャルメディアの民主的な役割もつぶしかねない」と危惧し、専門的な知識を持つ研究者やNGOの関与が不可欠と訴える。

 欧州連合(EU)は5月から、デジタル空間の個人情報の保護を目的にした一般データ保護規則(GDPR)を施行する。世界で最も厳しい個人データ規制とされ、保護が十分でない第三国への情報の移転は規制される。スイスでは、デジタル空間の個人情報を憲法で守られるべき権利として位置づけようとする動きがあり、個人情報が第三者に使われる場合、本人に情報利用料が支払われる仕組みも提唱されている。

Let’s block ads! (Why?)


Source link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Check Also

マツダ、2.5リッターターボ搭載の「CX-30」2021年北米モデル – Car Watch

「CX-30」の2021年北米モデルを発表  マツダノースアメリカンオペレーションズ(Mazda North … …