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地方私鉄や第三セクターのビジネスモデル探訪 – ITmedia

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 鉄道を運営している会社が、さまざまな関連ビジネスを行い相乗効果で経営実績を上げるのは、都市部に限った話ではない。地方でも、鉄道だけではなく総合企業グループとして実績のある鉄道会社がある。

 一方、経営の厳しい地方私鉄や第三セクターは、独自のビジネスで利用者や注目を集めることで、状況を改善しているところも多い。

 今回は、数々のそんな鉄道会社を紹介したい。


SLの運行で人気を集める大井川鐵道

鉄道会社なのに車を売る?

 静岡県にある静岡鉄道は、トヨタ自動車のカーディーラーである「静岡トヨペット」「トヨタカローラ東海」「ネッツトヨタスルガ」を経営している。さらには、「静鉄自動車学校」という自動車学校も運営する。

 静岡鉄道は新静岡〜新清水間、つまり静岡市内(合併する前の静岡市と清水市)で鉄道を運行している。この静岡鉄道は、地方では珍しく高頻度運転のダイヤを組んでいるため、多くの地元の人たちに支持されている点が特徴だ。ダイヤは、平日昼間は10分間隔、ラッシュ時には6分間隔で、通勤・通学に便利な鉄道となっている。

 だからといって中古車両を運行しているわけでもない。静岡鉄道では「A3000形」という総合車両製作所製の「sustina」シリーズの新車を導入し、編成ごとに7色を使い分け、「shizuoka rainbow trains」と名付け、新しさと快適さを利用者にアピールしている。

 もちろん、静岡市といっても広いことは重々承知だ。沿線だけで市内の交通がまかなえないのも確かである。


静岡鉄道はニコニコ超会議にも出展していた



 鉄道事業の常として、バス事業も並行して経営する企業は多い。静岡鉄道も子会社の「静鉄ジャストライン」などが、静岡市を中心に広大なバス路線網を持っている。特に静岡市内のバス路線はたいへん充実しており、市の中心部やその周辺で暮らすにはバスと鉄道だけで生活できる、という印象さえ抱かせるほどである。

 ちなみに「鉄道」を名乗っていながらバスしか運行していない会社もあるが、それはもともと鉄道事業とバス事業をやっていたもののバス事業だけになったものである。

 静岡駅に東海道新幹線「のぞみ」は停車せずとも、静岡市は静岡県の県庁所在地、しかも政令指定都市であり、およそ69万人の人口がいる。そんな地域の状況が、充実した公共交通を成り立たせるのだ。

 ところが、である。静岡鉄道はグループ内に自動車販売店を持っている。もともと、トヨタ自動車は地域の中心となる企業に出資して販売店を経営してもらうというスタイルを採用しているため、なにも鉄道利用と競合しかねない自動車販売店をわざわざ運営しなくてよいのにとさえ思う。さらには、鉄道やバスに乗らなくなる人を生み出す、自動車教習所の運営まで行っている。そのほか、注文住宅の建設を行う「静鉄ホームズ」や、介護事業、葬祭事業なども手掛けている。

 さらにこれらの事業は、静岡県駿河地方でしか基本的に行われていない。こうなると静岡鉄道の実態は、鉄道を中心とした企業グループというよりも、地域を支える総合企業グループといえるのではないだろうか。

 似たような形態の鉄道グループ企業として、同じ静岡県の浜松市にある遠州鉄道がある。こちらもトヨタ系の自動車ディーラーを経営し、自動車教習所も保有、ガソリンスタンドや介護事業も行っている。電車も高頻度運転であり、車両も自社専用の車両だ。バスも充実している。なお浜松市も政令指定都市であり、人口はおよそ79万人。浜松駅に「のぞみ」が停車しないことまで共通している。

 いずれも鉄道会社というのは名目的な存在で、実際には地域の顔役企業として存在している、その看板として「鉄道」の名前を有している、という見方が正しいだろう。

 しかし「鉄道」があるからこそ、静岡鉄道は信頼されるのだ。



せんべいだけではなく、石を売る銚子電気鉄道

 石を売る、といってもつげ義春のマンガのことではない。多摩川で石を売ることは難しいとは思うものの、線路の石もまた「売れるのか?」と感じてしまうが、実際に販売した鉄道会社がある。銚子電気鉄道だ。

 経営の厳しい銚子電気鉄道は、以前から「ぬれ煎餅」などの食品販売に力を入れ、漬物やお菓子、ビールなどの通販事業を行っていた。もちろん、鉄道グッズなどの販売も行っている。

 駅ではあえて「硬券」を売り、銚子行きの乗車券は「上り銚子(調子)」として発売し、コレクターの需要にも応えている。

 そんな銚子電気鉄道は、線路の石を缶詰にして販売している。私鉄の銚子電鉄だけではなく、天竜浜名湖鉄道、真岡鐵道、えちごトキめき鉄道、若桜鉄道といった第三セクター各社が手を携えて、銚子電鉄とほか2社の石(真岡鐵道は石炭)をそれぞれ缶詰にしてセットで通販を行っているのだ。

 これらの鉄道事業者は、ファンサービスに熱心で、事業のアイデアを出すことに力を入れている。

 えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長は公募で就任した社長で、以前はいすみ鉄道の公募社長だったことでも知られていた。少し前に退任した天竜浜名湖鉄道の長谷川寛彦前社長は自社への誘客に熱心で、古い施設を利用したファンサービスに力を入れていた。若桜鉄道は、山田和昭元社長がマーケティングに熱心であり、退任後もその精神は生き続けている。真岡鐵道はSL運行に力を入れていた。銚子電気鉄道の竹本勝紀社長は、税理士としても活躍しており、電車の運転免許まで取得した。


天竜浜名湖鉄道の湘南色の気動車

 経営がギリギリの鉄道事業者は、このように観光客の誘客を行うことで経営を維持してきた。そんな状況でコロナ禍が起こり、経営は厳しくなってきた。

 そこで、石を売るのである。支援を求めるために、線路の石を記念グッズとして販売する。

 なお、銚子電気鉄道は鉄道事業よりも菓子類の販売のほうが売上は多い。



鉄道そのものを観光資源にする大井川鐵道

 鉄道そのものを観光資源としてとらえ、乗ってもらう体験全体をメインの事業にしている鉄道会社がある。静岡県の大井川鐵道だ。

 新金谷から千頭までのSL列車は人気で、ほぼ毎日運行している。大井川鐵道そのものは、JRと金谷で接続しているが、静岡や浜松方面から鉄道でやってくる利用者をメインと考えていない。だから金谷ではなく一駅乗らなければならない新金谷からSLは運行される。

 そして大井川鐵道の興味深いところは、SLの運行をバスツアーと組み合わせているところだ。バスツアーの中にSL体験乗車を組み合わせ、SL牽引列車に乗ってもらうこと自体を体験として提供する、というのがこの会社のビジネスモデルである。


大井川鐵道はSLの運行がメインの事業だ

 新金谷の駅に行くと、駅近くには大井川鐵道経営のお土産やグッズを販売する店舗があり、観光客のための施設が充実している。近くにはSLの転車台もある。ツアーの場合は、片道だけSL牽引列車に乗車し、その間バスは回送というシステムをとっている。

 さらには普通のSLだけではなく、「きかんしゃトーマス」のSLも走らせ、子どもたちに人気だ。つまり大井川鐵道の売上の多くは、SL運行によるものなのである。

 このように、それぞれの地域や企業ごとに、鉄道事業のあり方はさまざまである。だがいずれも、鉄道があってこそのビジネスといえるのではないだろうか。


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