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教員の働き方改革「モデル校」、球児に芽生えた自主性

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 4月2日にあった石川県の輪島の職員会議、校長の赤田英明が報告した。「本校は多忙化改善の取り組みの県のモデル校になりました」。野球部監督の冨水諒一(36)は思わず目をつむった。

 「これは、まずい――」

 「ブラック部活」など教員の働き過ぎが社会問題化し、県教育委員会は3月、「教職員の多忙化改善に向けた取組方針」を県内の公立小学校、中学校、高校に通知した。部活動はスポーツ庁の指針に沿い、休養日は週に平日と週末に1日ずつ、練習は平日2時間、週末3時間などと示した。

 ある県立高校は「あくまで努力目標」と受け止め、野球部の活動は大きく変えないという。参考の形で通知を受けた私立高校も「野球部にはほぼ影響ない」と口をそろえる。だが、「モデル校」となった輪島はそうはいかない。

 休養日は従来の倍となり、午後7時の完全下校は厳格化され、全体練習の時間は減った。高校野球の監督になりたくて教員になった冨水にとって「部活は楽しみであり、仕事ではない」。3児の父ながら週末は野球で家を空け、それも当然だと思っていた。むしろ選手に休みを与えることに、「恐怖心があった」。

 昨年度、部活動の指針を取りまとめたスポーツ庁の会議でも、「中学と高校で同じでいいのか」と練習時間などに異論は出たという。ただ、会議に出席した委員の1人、山口香・筑波大教授は「指針に罰則規定は設けていないが、今までの指導を見直す機会にしてほしい。より効率的にできないか、と」。

 新たな発見は、あった。

 「自分たちで市営球場を借りてやっていいですか?」。練習時間が減ることを聞いた輪島の選手は、全体練習後に自主練習をする場所の確保に動いた。休養日に自主練習する選手も出てきた。エースの川崎俊哲(としあき)(2年)は「今は野球をする喜びを感じている」。

 その姿は冨水の目にハツラツとして映った。「自分が納得いくまでやるよう駆り立てることが、これからの指導者の役割なのか」

 今の葛藤は薄れていくと信じている。この夏に悔いない戦いができれば……

◆◆◆

 「上からやない。バットは下からと言ってるんだ」

 泉丘の打撃練習で声を響かせるのは、佐々木久之(ひさゆき)(41)だ。金沢市内の会社に勤める傍ら、週3回、外部コーチを務める。

 高校時代は桜丘で三塁を守り、5番打者として活躍。高校野球の監督を志したが大学受験に失敗し、教職は諦めた。だが野球はずっと続け、今も草野球チームを四つ掛け持つ。

 20代の時、打てなくなった。上からたたく、手首を返す、下半身で打つ――。従来の教えに疑問を持った。長い模索の末、3年前に見つけた打撃理論に合点がいった。習得のため他県の指導者の下へも赴いた。「自分が打つためにね」

 素振りなど基礎練習を経て佐々木は新たなスイングをものにすると、2016年5月、高校の後輩でもある泉丘監督の寺口結(31)の誘いで外部コーチに。その夏、泉丘打線は4試合で4本塁打を放ち、8強入り。「佐々木さんの影響は大きい」と寺口は認める。

 指導の特徴は投球の軌道に合わせて下からすくい上げるスイングにある。手首を返さず、上半身主導で振る。飛球が増えるが、「一番のチーム打撃は本塁打」を合言葉に長打狙いを徹底する。4番打者の松木大芽(3年)は中学までと正反対の教えに半信半疑だったが、今冬からスイング改造に取り組むと6月だけで5本塁打。「迷っていたけど、大学でも野球を続けます」と快感にとらわれた。

 「やっぱり野球の楽しさはバッティングなんだよ」という佐々木は早朝、週末は自分も草野球でプレーする。本塁打が増え、そこで得た感覚を指導に還元している。では、教え子が打つのと、自分が打つの、どっちがうれしいのか?

 「両方うれしいが、とりあえずあいつらには負けられない」。ジムで鍛えた体はゴツゴツとし、技術も体力も今がピークという。

=敬称略(塩谷耕吾)

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