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本当になりたい自分が見つかった、でも見返すのは怖い木村カエラの人生初ライブ

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タイムリミットがあったからがんばれた

そんな遠回りをしながら1年半が経った頃、もうさすがに時間がないと思って、ある日、「相談がある」と言って『saku saku』のプロデューサーを渋谷に呼び出したんです。こっちからの相談なのに、自分が行くんじゃなくて、呼び出した(笑)。ひどい若者でしたね。でも、そのぐらい必死だったんだと思います。当時、私が信頼できた数少ない大人で、私をわかってくれていて、お父さんみたいな感覚で私に接してくれていた人だったから、とにかく話を聞いてもらいたかったんです。「私には時間がない。どんな方法でもいいから歌を歌えませんか?」って。私、絶対売れるからって言って。

そうしたら、そこから急に話が進みはじめました。3カ月後に『saku saku』の企画で399枚限定のシングルを出そうということになって、ものすごくタイトなスケジュールで準備が始まりました。ジャケットの人面犬のイラストは、『セブンティーン』の仕事をした後に編集部で資料やコピー機を借りながら自分で描きました。

編集部のみんなも「がんばれがんばれ」って応援してくれて。なんとか間に合って発売したら、『saku saku』ファンの人達が並んで買ってくれて、すぐに売り切れたんです。めまぐるしかったけれど、夢がかなう瞬間ってすべてがクルクルと動き出して、なんだかおもしろいなあって、いま振り返ってそう思います。

あの2年、私が頑張れたのは、やっぱりタイムリミットがあったから。子供の時からの夢をあきらめなくちゃいけないという怖さがありました。でも、もし、そのリミットがなかったら、「また次に頑張ればいいか」なんて思いながら、今ごろまったく違う人生を送っていたかもしれないですね。

みんなにも、なりたい自分を見つけてほしい

今回、ドラマやCMのタイアップで歌った曲が集まってきたので、来年15周年を迎える一歩手前でミニアルバムを出すことになりました。そこであらためて1曲1曲を聴いてみると、曲によって声も、キャラクターも、歌詞の内容もぜんぜん違う。曲ごとにいろんな自分がいて、「これは誰?」って私自身でさえ思うような感覚がありました。

でも考え方によっては、なろうと思えばどんな自分にでもなれるということかって、その時に思いました。なりたい自分を見つけることでみんなイキイキできるし、みんなにもそういう自分を見つけてほしい。そういうメッセージをこのアルバムから発信できたらと思って、『¿WHO?』というタイトルにしました。「あなたは今誰ですか?」みたいな。だから、いろんな木村カエラが聴けるという意味での「WHO」と、自分探しという意味での「WHO」。タイトルには、この二つの意味が込められているんです。

大人になって、自分以外にも時間をかけるべき大切なものがたくさんできてきて、あの頃よりも自分だけに向き合う時間は減ったなと思います。でも、あの頃とは違う自分への向き合い方におもしろさも感じます。

今は個性を出しづらい時代だって言われたりもしますけど、もっと自分を見つけて、あなたしか持ってないカラーを出してみようよって。自分にどんどん向き合おうよって、そんなメッセージが伝わったらいいなと思っています。

(聞き手 髙橋晃浩)

     ◇

きむら・かえら 1984年、東京生まれ。2004年6月、シングル「Level 42」でメジャー・デビューし、これまでに25枚のシングル、9枚のアルバムを発表。2013年には自身が代表を務めるプライベートレーベル、ELAを設立。音楽以外にも多彩な才能を発揮し、2018年には初の絵本『ねむとココロ』(KADOKAWA)を出版。最新作のミニアルバム『¿WHO?』には、日本テレビ深夜ドラマ『プリティが多すぎる』主題歌「COLOR」、映画『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』エンディングテーマ「ちいさな英雄」、JRA CMソング「HOLIDAYS」など5曲を収録。

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