Home ユーチューバー 辻仁成「太く長く生きる」(48)「ユーチューバーになってみた」

辻仁成「太く長く生きる」(48)「ユーチューバーになってみた」

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「パリは連日猛暑で、ビールがうまい!」

 ◇ ◆ ◇  

 子供たちの間で「なりたい職業」の第1位がユーチューバーだそうですね。はじめてユーチューバーという言葉を聞いた時、チューバーというところに、何か不思議な違和感を覚えたのはわたしだけでしょうか? もちろん、うちの息子も幼い頃からユーチューブ(YouTube)が大好き。毎日、チェックをしています。今時の子供たちはテレビではなく、ユーチューブなんですね。逆に大人たちはテレビを見ておりますから、ここに自然と乖離(かいり)が存在しておるわけです。

 ◇ ◆ ◇  

 わたしと息子君の年齢差は45歳、この45年の年齢差はどんなにがんばっても縮まることがありません。しかも、息子はフランスで生まれ、学校もフランス、友人たちも全員フランス人。ですから当然、フランスのユーチューブを見ています。ところが、彼が話すフランス語を親であるわたしは理解することができないのです。このままではいけない。そこでわたしはフランス語の勉強も兼ね、率先して息子がハマっているユーチューブを覗(のぞ)くことになるのです。毎日、夕飯時には一緒にユーチューブをチェックする。これが我々の日課になりました。わたしが夕飯を準備している時、息子はパソコンをチェックし、今日一緒に閲覧する番組を選んでいます。ごはんを食べながら、仲良く番組を見て大笑いをするという感じ。この夕飯時のユーチューブがわたしと息子を、そして、フランスと日本を繋(つな)ぎ、結びました。日本に住んでいるフランス人のユーチューバーたちの番組を見ながら、息子は日本のことを勉強する。これは、フランスで生まれた日本人の息子にとって心強い味方の出現でもありました。学校の中でたった一人の日本人である息子君。生まれてもいない祖国のことを周囲に語る時、彼らの番組が心強い後押しをしてくれます。彼らの受け売りが息子の知識となり、彼は日本人としてのアイデンティティーを仲間に誇示することができるようになったのでした。

 ◇ ◆ ◇  

 そんなある日、不意に息子が言いだしました。

 「パパ、絶対、ユーチューバーにむいてるよ。やってみたら?」

 何を言い出したのかと思いましたが、この予想外の一言がわたしたち父子の間に一つの目標を生んだのです。パリ在住の仲間を集め、チームを結成。管理人兼アドバイザーが息子です。ユーチューブに関しては一番見識豊かなのが息子ですから、彼のアドバイスこそが天の声となるわけです。大人たちはみんなたじたじ。

 さあ、これからが正念場です。わたしたちはまず2Gというチーム名を決めました。英語読みすると、つーじー、となります。ダジャレのようですが、悪くありませんね。携帯を使っていると、3Gとか4Gという言葉を聞きますが、それは通信規格のこと。Gはジェネレーションを意味しています。なので、4Gは第4世代ということです。3から4になり、速度があがって、待たずに動画を見ることができるようになりました。もうすぐ5Gの時代が来ると言われていますので、さらにさくさくと閲覧可能なのでしょうね。なのに、あえて、わたしたちは2Gを名乗るわけです。パリからスローミュージックを届けたい。時代の影響を受けない本物の音楽を届けたい。そこで2Gなのです。このGは14歳の息子と58歳の父ちゃんの二人のGUYSも意味しています。二人のジェネレーションの違いを埋めるためのユーチューブ、悪くないでしょ? ぜひ、フォロワーになって応援してください。音楽大好きな大人から子供まで楽しめるユーチューバーを目指したいと思います。第1回配信は、偉大なフランスの歌手、ジャック・ブレルの「Ne me quitte pas」を歌いました。今後、ピアフの「ラ・ヴィ・アン・ローズ」とかゲンスブールの「リラの門の切符切り」、ガーシュウィンの「サマータイム」など世界中の名曲に挑戦したいと思います。ちなみに「Ne me quitte pas 2G」をコピーし、パソコンで検索していただけると、すぐにヒットします。チャンネル登録していただけますと、父子の励みになります。お願いします!

今日のひとこと。 『子供と何か共通の夢や趣味や愉(たの)しみを持てば人生は倍楽しくなります』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に『太陽待ち』『サヨナライツカ』『右岸』『永遠者』『クロエとエンゾー』『日付変更線』『息子に贈ることば』『パリのムスコめし』『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』『父 Mon Père』『エッグマン』など多数。近著に『立ち直る力』(光文社)。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。

 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

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